CHOICE
街には桜が咲いた。
真新しいスーツに身を包む、新入社員が闊歩し始める。
歓迎会だ研修だと周囲は騒がしい。
何も変わらぬまま、春を迎えた日。
仕事を終えて家に帰ると、友人から結婚式への招待状が届いていた。
式の日付は6月。
ジューンブライドになるのか。
もう長いこと会っていないが、さぞ素敵な花嫁になるのだろう。
返信用のハガキに印をつけようとして、ふと手が止まる。
誰かに、結婚という選択を決意させた彼女。
共に人生を過ごすと決めるというのは、どんなに覚悟が必要なんだろう。
私にも過去には彼氏がいた。
だが、私は誰にも選択されることなく、間もなく20代最後の年を迎えようとしている。
―――誰かに選ばれた人生と、誰にも選ばれなかった人生がある。
その違いはいったい何なのだろう?
『おひとり様』なんてかっこつけてみても、誰かがいなきゃやっぱり寂しい。
自分が仕事以外で、誰とも関われない人間なのを認めたくないのか。
―――違う。
選択してこなかったんだ。
『相手に選ばれる』ことばかり考えていた。
自分が『選んで』いいんだ。
私の人生は私のものだもの。
何だか、目の前が急に開けた気がする。
ハガキの『出席』に大きく丸をつけ、欠席に二重線を引く。
結婚式に着られる服はあっただろうか。
休みにクローゼットを確認しよう。
まっすぐに他人と向き合う。
もちろん、仕事以外で。
まずはそこから、私自身の選択を始めよう。
Copyright (c) 2014 Ai Sunahara All rights reserved.
-Powered by HTML DWARF-