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● READY,GO! 3  ●

 「副部長も決まったし、部室に行くか」
先生は「あとは君たちで」と、職員室に戻っていった。
部長を先頭に教室を出て、ぞろぞろと部室棟へと向かう。
その一番南側にこれまたプレハブの建物がある。
向かってドアの右側には『陸上部』と書かれた、真新しい木の札がかかっている。
「ここが部室だ」
ドアを開けて中に入ると、ちょっとカビくさい。
「部長、カビくさくない?」
副部長が苦情の声をあげる。
「毎日来て窓開けしてたんだけど、やっぱりだめか」
「ここって……」
「ずいぶん前は何かの部室だったらしいけど、その部がなくなってずっと倉庫になっていたところだ。女子はカーテンで区切って使うことになるから、よろしくな」
「え〜!!」
女子からは思いっきり非難の嵐だ。
無理もない。
「仕方ないだろ! 創部一年目でちゃんと部室があること自体奇跡みたいなもんなんだよ!!」
そうか。
部室がなくて、特殊教室や教室で着替えたりなんてこともあったかもしれないのだ。
「山内先生に協力してもらって、カーテンはもう取りつけてあるから。
必要な器具とかは当分、学校の備品を使うことになる。
部費が入るまで不便だろうけど、我慢してくれ」
「っていっても、誰ものぞかないけどな」
「何でそういうこと言うのよ!」
あたしはつい、前にいた男子をどついてしまった。
「いってーな、何すんだよ! 乱暴者!」
「変なこと言う方が悪いんでしょ!!」
そこに鈴木が口をはさんだ。
「あのさ、こいつに『乱暴者』って言っても何の意味もないと思うよ、本当のことだから」
「そうよね。昔からだし」
鈴木の意見に世良も同意する。
「世良、あんただって他人事じゃないでしょうが」
他の二年生はそのやり取りを少し引いた感じで見守っている。
『さわらぬ神に祟りなし』というやつなのか。



  
 「先輩たちは、ずっと前からの知り合いか何かですか?」
一年生の川村さんがあたしたちに向かって、疑問を投げかけた。
「ううん。今日が初めてだよ」
「えっ?!」
「ずっと友だちなのは、この三人だけ」
世良があたしと鈴木を指さした。
「あとはみんな初対面」
牧村くんが後の言葉をついだ。
「俺と園部も友だちだ。それでなくても高山小出身はみんな顔見知りっていうか、幼なじみみたいなもんだしな」
高山小学校は人数が少ないため、一学年2クラスしかないのだという。
そのため、6年間通えば同級生どころかその兄弟姉妹の顔まで覚えてしまうこともできるらしい。
最近は団地の子たちがいるから、クラスはもうちょっと増えているらしい。




 あたしはどついた男子に、謝っておいた。
「ごめんね、名取くん」
「……俺、『名取』じゃなくて『香取』なんだけど」
「ご、ごめんなさい」
「まぁ、いいけどね。よく間違われるし」




 先生が考えてくれた練習メニューのコピーが配られる。
『実際やってみてやりづらいとかあれば先生と相談して外してもいい』ということが部長から説明される。




 西山中学陸上部の第一日目は、こうして終わった。



                                      



                                          
第六話・(3) 終

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