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NOVELS

『I can't say “I love you”』





「愛してる」と言えない。
言ってはいけない。
口にしたならすべて終わってしまう、始まる可能性のない恋。
―――あたしたちは、「親子」だから。




 親子といっても血はつながっていない。
あたしの母親と義父の鷹明さんが結婚したのは、10歳のとき。
若い父親ができてとても嬉しかったし、一緒に出かければ歳の離れた兄妹のようでもあった。
何よりも嬉しかったのは、二人ともあたしを子ども扱いしないところだ。
叶えられそうなことは譲歩したり、親としての意見を取り入れたりしながらもできるだけ叶えてくれた。
だからといってベタベタに甘やかされたこともない。
あたしはものすごく幸せだった。
この幸せは、いつかあたしがお嫁に行く日まで永遠に続くと思っていた。



結婚から5年後、母が亡くなった。
どこで聞きつけたのか、実父がやってきてあたしを引き取りたい、と鷹明さんに告げた。
あたしは嫌だった。
今更、他人のような父親のいる家に行くくらいなら、この家を出て一人で暮らす。
そう思いながら、父と鷹明さんの話し合いに同席した。
「三島さん」
鷹明さんは、はっきりと告げた。
「血がつながっていたら、家族ですか? 僕と沙和は、血が繋がっていなくても千恵子さんが遺した大切な家族ですよ」
千恵子とは、あたしの母の名前だ。
父はその言葉に席を立った。
「失礼する」
その後姿を見送りながらも、何の感情もわいては来なかった。
十年以上逢っていないんだから、当然といえば当然か。
恨むことも憎むことも、逢いたいとさえ思わなかったのはそれだけあたしが二人に愛されて育ったという証だ。



 ずっと家族でいたいと願ったそのひとを。
『男』にしてしまったのはあたし。
女として、触れて欲しいと願う。
『娘』としてではなく。



 激情のままに誰かと触れ合い、一夜を共にしても、脳裏に浮かぶのはあのひとの姿だけ。
そしてこの身に残るのは激しい自己嫌悪。
あのひとが欲しい。
あたしはそれを唯一、許されない存在。



 一度、親子になってしまった男女はどんなことがあっても結ばれてはならない。
それは民法にも規定されている。
実の親子がつがいになるのと同じくらい、許されないこと。






 あたしの母から愛をささやかれ続けたこのひとに、あたしのありったけの想いをぶつけたならどうなるだろう。
想像はするけれど、言えない。






 たとえ言えたとしても、結ばれることはない。
あたしたちは『親子』だから。












                             終






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