―――学校で告白するのに意外と困るのは、告白場所だ。
昇降口に一番近い南階段の影になる場所に、隠れながら思う。
「大丈夫、あいつ来てるよ」
一緒について来てくれた友だちが彼の姿を確認してくれた。
日当たりのいい昇降口の蒸し暑さと反比例するかのように、昇降口はひんやりとしている。
一瞬、目を閉じて彼の姿を思う。
少女漫画のように『実は相手も自分が好きでした』なんて結末でなくていい。
正直、あたしは美人じゃない。
そのぐらい容姿についてはわかっているつもりだ。
傷つくことは数日間かけて承知済だ。
それでもありったけの勇気を振り絞って、呼び出しの手紙を書いた。
そして、手紙を読んでくれた彼が昇降口で待っている。
名前をちゃんと書いたとはいえ、いたずらだと思われても仕方ない手紙をしっかり読んでくれていた。
それが嬉しい。
「行かないの? あいつ、帰っちゃうよ」
いつまでも動こうとしないあたしに、友だちが声をかけてくれる。
「行ってくる。 振られたら、骨は拾ってくれるんでしょ?」
あたしは立ち上がりながら、スカートをたたく。
友だちの方を振り返る。
彼女は少し笑った。
さぁ、行こう。
死んでしまいそうなほど本気で挑めば、彼はどんな答えを出してくれるだろうか。
全力の答えが聞きたいんだ。
あなたの言葉で。
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