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● CATCH FIRE 17  ●

 落ち着かないまま、その日の部活を終える。
部活をやっていられるような状態じゃなかったけど、県大会のことを考えたらそんなことは言ってなんかいられない。
世良のいとこ・恵庭冴良にも借りがある。
市内陸上大会のとき、県大会で勝つと決めた。
それを果たすためにも。


 誰が『特別』かなんて考えていられない。
少なくとも、今は。
そう思っていたのに。


 帰りぎわ、校門のところで声をかけられた。
「藤谷さん」
振り返ると、酒井さんともうひとり女子が立っている。
「何?」
「ごめん。 この子、藤谷さんに話があるらしいんだ」
酒井さんがちらりと隣に立つ女子を見た。
あたしも見たことがある子だ。
名前は………梁瀬やなせさんだ。
思い出した。5・6年の時同じクラスだった。
「その話って、ここでできる?」
あたしは梁瀬さんに尋ねる。
もしかしたら、あんまり他に聞かれたくない話なのかと思ったからだ。
梁瀬さんは首を左右に振る。
「じゃあ、場所変えようか」
一緒にいた世良と智穂はそれを見て、あたしからちょっと離れる。
「瞳、あたしたち先に帰るね」
「うん。 ごめんね」
「また明日ね」
「バイバイ」
そう言うと、世良たちが帰っていった。
酒井さんが梁瀬さんに尋ねている。
「あたしもいない方がいいよね?」
「うん、ごめん。 二人で話したいから」
彼女は酒井さんに答えている。
何だ、しゃべれるじゃない。
さっき、首を振るだけだったのは何だったのか。


 梁瀬さんと自転車置き場の隅に移動する。
ここなら自転車取りに来た子たちからも柱に隠れて見えない。
いちいち人目のない場所を探すのも面倒だし。
「で、話って何?」
「すごく言いづらいんだけど………鈴木くんとあんまり一緒にいないでほしいの。 藤谷さんには赤垣くんがいるんでしょ」
「は?」
何、それ。
何でそんなこと、この子に言われなきゃいけないの?
「何が言いたいの? 鈴木とは友だちなんだから一緒にいて何が悪いの? それにあたしと展人はただのいとこ同士なんですけど」
あたしの言葉に梁瀬さんが反論してくる。
「鈴木くんのこと、何とも思っていないなら離れて欲しいの」
「あなたに関係ないでしょ」
「関係あるわよ! 私、彼が好きなの!」



彼女の言葉を聞いた瞬間、時間が止まったように感じた。



第十一話(17)・終



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