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● BE THERE 14  ●

 次の週の木曜日。
あたしはくみちょーと机を向かい合わせて座っている。
目の前には渡したばかりの進路調査表が置かれている。
くみちょーの脇には山のように積まれた本がある。
たぶん高校の資料だろう。



 「『千寿西高以外の共学』と『陸上部の強い高校』ね……」
しかられることも絶句されることもなく、くみちょーは資料とは別のファイルをめくった。
成績関連の資料なのかな。
動じなかったくみちょーは、ベテランの先生みたいに見える。
「千寿西高を外したのはなぜ?」
「お姉ちゃんが通っているからです」
「お姉さん?」
尋ねられて、あたしは顔をあげた。
そうか。 くみちょーは今年来たからお姉ちゃんのこと知らないんだ。
「はい。 同じ学校に入って比べられたくないんです」
「わかりました。 千寿西を外すとなると、藤谷さんの今の成績なら千寿東か中平北、第三女子あたりが妥当ね」
「千寿東……ですか」
千寿東は展人が目指す学校だ。
中平北は智穂が目指すと言っていた。
誰ともかぶらないことはありえないと思っていたが、見事に当たっていた。
みんな成績が似たりよったりってこと?
主要五教科500点満点中、あたしは平均380点ぐらい。
数学と理科が苦手な分、国語と社会、英語でカバーしている。
「えぇ。 もうちょっと頑張れば千寿南高も行けるわよ」
くみちょーはさらりと言ってのけた。
千寿東・西・南のうち千寿南高がいわゆる進学校であることぐらいは、あたしでも知っている。 なぜか北だけがないことも。
そんなところに放り込まれてもついていけないと思う……。
「あせって絞る必要はないのよ。 自分がいま居る位置を知ってもらう目安としておいてもらえればいいわ」
いま居る位置。
それが点数になって、あたしに押し寄せる。
自分の位置なんてわからないよ。



 「私立も共学がいいのかしら?」
くみちょーが積まれた資料の中から何冊か持ち出してページをめくっている。
「できれば」
「そうなると東条学院高等部ぐらいね」
「他にはないんですか?」
「陸上部が強いところは城南学院じょうなんがくいんがとび抜けてるの。 成績でいくならそれにプラスして聖華女子・蒔田まきた学園・桜花学園高等部。
このあたりなら今の成績で充分受かるわ。 でも全部女子高なのよ」
桜花学園高等部はお姉ちゃんも滑り止めの滑り止めで受けていた学校だ。
「それじゃあ、私立は東条学院とうじょうがくいんと城南学院でいきます」
「それが今の希望に一番近いわね」




 もしもう一高受けられそうなら、桜花学園高等部を受けてみたいと思う。
完全に興味本位なんだけど、お姉ちゃんの足跡をたどりたい。
生徒会長としてでなく、あたしと和紗のお姉ちゃんとしてでもない、また違う足跡を受験を通して知りたいと思った。
―――たったひとりの人を追った、それだけ激しいものを身の内に隠した女の子のことを。
別の学校と受験日が重なるとかあるかもしれない。
そのへんは来年、担任になる先生と相談しよう。

    



   

   

                                         
第十話(14)・終
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