モドル | ススム| モクジ

● カルナバル 1  ●

 八月がもうすぐ終わりそうなころ、二学期が始まった。
いつものように途中で世良と合流して学校に向かう。
今日は朝練がないから智穂も一緒だ。
「宿題全部終わった?」
あたしが聞く。
「あたしは社会終わってない。 提出、授業の日でしょ?」
世良はのん気に言った。
「あたしは全部終わったよ。 お兄ちゃんに教えてもらったけどね」
「え? 智穂、お兄ちゃんいたんだ?」
世良が智穂に尋ねる。
「うん。今は別に暮らしてるけど、帰ってきてるときに教えてもらったんだ」
いいなぁ。
あたしはというと宿題を全部自分で終わらせた。
お姉ちゃんに聞くと「自分で調べろ」って言われるか、黙って辞書を差し出されるんだ。
その方が自分の身につくからだってお姉ちゃんは言うけど、本当かなぁ?
智穂とお兄さんは確か10歳ぐらい年が離れてるからあたしは特に遊んでもらったことはないけど、うらやましかった。
昔はお兄ちゃん欲しかったからかな。


 あ、そうだ。
「世良、『あれ』考えてきた?」
世良に声をかけると、思い出したようにこちらを向いた。
「あぁ、『あれ』ねぇ……考えてないや。 どうしよう」
「あれって何?」
智穂があたしたちに問いかける。
「文化祭のこと」
「え? クラスの出し物とかあるの?」
「ううん。 そうじゃないんだ」
「まさか、陸上部で何かやるとか?」
智穂の再度の問いかけにあたしたち二人はうなずいた。

 

 ことの起こりはお盆休みの数日後。
部活に行ったら、みんなを集めて部長が言った。
「文化祭参加するぞ」
あたしたちはその一言に驚いた。
「なんで?」
「出し物やる気か?」
「文化祭に部で参加するなら夏休み前に申請が必要でしょ?」
みんながそれぞれ疑問を打ち明ける。
「申請はちゃんと夏休み前に出してある」
部長が言う。
「何やるか決まってないのに?」
あたしが聞くと、また部長が答えを返す。
「『何かやる』って書いといた。 今のところ生徒会から『ダメ』って言われてないから平気だろ」
ちょっと待て。
そんなのいいの?
もしあたしが生徒会役員ならそんなあいまいな申請書は絶対許可しないんだけど。
「そういうわけだから、夏休み明けまでに何やるか考えてきてくれ」
「えぇー!!」
あたしたちはいっせいに声をあげた。
文化祭に参加したくないわけじゃないけど、考える時間が短い。
それに準備の時間だって取らなくちゃいけない。
そんな中で何を考えろっていうのか。
強引すぎる。
部長ってあんな人だったのか。
ちょっと部長を見る目が変わりそうだった。

モドル | ススム | モクジ
Copyright (c) 2009 Ai Sunahara All rights reserved.
 

-Powered by HTML DWARF-