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● カルナバル 2  ●

 二学期始業式の日は、体育館に集まって始業式、クラスでホームルームをして宿題と通知表を提出して終わった。
授業はないけど部活がある。
「瞳、河内」
カバンを持って教室を出ようとすると、展人があたしたちを呼び止める。
「何?」
「今日、部室じゃなくてE組の教室に集合だと」
「え」
つい顔に力が入る。
やっぱり文化祭の話だろうな。
部長のあれは冗談じゃなかったってことだろうか。


 全員が2年E組の教室に集まり、部長が話を始めた。
思ったとおり、文化祭の話だった。
あーでもない、こーでもないといろんな意見が出る中で有力なのは「今までの部活内容を紹介する」「迷路を作る」「おばけ屋敷」の三つ。
あたしがあげたのは「校庭を使う」ということだったが、それだと絶対晴れてなきゃ使えない。
第一、何に使うか考えられなかったので、早々に却下された。
他の意見であたしがいいと思ったのは「部活紹介」だった。
県大会終わってるから写真をそれぞれ親から借りることもできるし、二週間で準備できる。
今まで知らなかった人たちに陸上部の活動を伝える。
それはこの中学を卒業していった先輩たちや未来の新入生たちにも伝わるだろう。


 何となく、自分の手首に視線を移す。
あたしは少し考えて、手をあげた。
「藤谷さん、どうぞ」
酒井さんが気づいて、声をかけてくれた。
「あの、これ、売ったらどうかな?」
あたしは自分の右手首を指さしながら言う。
みんなの視線があたしの手首に集中する。
そこにはプロミスリングがある。
「これじゃなくてもいいんだけど、家にある使ってない小物とかそういうの集めて売ったらどうかなって……思ったんだけど」
つけてないキーホルダーとか小銭入れとか一個ぐらいは誰の家にもあると思う。
そういうのはやっぱりだめかなぁ。
あたしの言葉にみんなが静まり返っている。


 「いいんじゃない?」
あたしの声に答えたのは世良だった。
「まず小物をみんなから持ち寄って足りなさそうなら何か作ればいいだろ」
そう言ったのは鈴木だ。
「食べ物じゃないから生徒会経由での保健所の許可はいらないな」
牧村くんが続けて言った。
展人もうなずいている。
「『部活紹介と小物を売る』で賛成の人、手をあげて」
酒井さんが言うと、ほとんどの手があがる。
「決定だな」
ぐるりと教室を見渡して、部長が言った。






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