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● カルナバル 3  ●

 「本当にあんなのでよかったのかなぁ」
あたしの口からこぼれたのは、疑問だった。
帰り道、前を歩く世良と展人、横を歩く鈴木があたしの方を見る。
思いつきで小物を売ると言ってみたものの、不安でしょうがなかった。
みんなもよくそんな企画に乗ると決めたものだ。
「あのな、もう決まったんだよ。 今さらうじうじ言ったってどうにもなんないだろ」
展人が言う。
「そうだよ。 せっかく決まったのにまた一から決めなおす気?」
世良も言葉を続けた。
「藤谷」
鈴木があたしを呼ぶ。
「絶対成功しなきゃダメだと思ってるのか?」
鈴木の言葉が突き刺さる。
確かに陸上部で初めての文化祭参加だし、できれば成功させたい。
「周りが『あの企画は失敗だな』って思ったっていいんだよ。 やってる俺たちが楽しければいいんだから」
その瞬間、胸に引っかかっていたものがストンと落ちた気がした。
そうか、失敗してもいいんだ。
あたしたちが楽しかったかどうか、それだけでいいんだ。
最初からうまく行くはずないんだもんね。
そう思ったら、何となく落ち着いてきた。


 家に帰って、机の中の使っていないものを探す。
どこかの観光地で買ってきたキーホルダーが三つと買ったけど使ってないシャープペンと色つき消しゴムが一つずつ出てきた。
あとは何かあるかなぁ。
使ってないノートも三冊ほど出てきたけど、これって『小物』って言わないような気がする。
『小物』って言ってみたけど、どこまでが小物なんだろう?
やっぱりブローチとかペンダントとか、キーホルダーぐらいまでだよね。
むずかしいなぁ。
みんなはどんなの持ってくるだろう?



 夕ご飯を食べながら、展人に聞く。
「そっちは何かあった?」
「いや、これから探すところ。 かなり処分してきてるから何も出てこないかもな」
そうだった。
展人は引っ越してきたときの荷物もだいぶ少なかったっけ。
「まぁ、そうなったら何か買ってそれらしくするさ」
それは何か違うと思う。
でも、しょうがないのかな。
「あなたたち、何か探しているの?」
お母さんがあたしたちに尋ねる。
「うん、文化祭の企画で使ってない小物出そうって言ってるの。何かないかなって探してたんだ」
「あら、そんなことするの」
お母さんは驚いたようだ。
陸上部がそんなことするなんて普通は思わないだろうな。
「じゃあ、私も何か探すよ」
文化祭に美術部で参加する和紗が言う。
「そうね。 お母さんも協力するわ。 二人がいる部活動のためですものね」
家の中の物ならあたしたちよりもお母さんの方が何倍も詳しい。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
展人と二人でお礼を言った。
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