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● カルナバル 8  ●

 当日の担当は少しずつ埋まって行って、空いてるのは一日目のお昼過ぎと二日目の最後だけになった。
あたしたちはどこでもいいって思ってたけど、みんなはやっぱり最後はやりたくないのかな。


 「じゃあ、俺たちは二日目の最後もらうよ」
鈴木が担当分けの紙に自分の名前を書きこんで、あたしに渡した。
あたしはそれを受け取って自分の名前を書く。
「人数調整する関係で後から一人誰か入れるかもしれないからよろしくな」
板河くんが言う。
あたしたち二人だけだと思ってたから、少し驚く。
「二日目は金庫持って帰ればいいんだよね?」
あたしは酒井さんに尋ねた。
「そうしてくれる? 合計は次の日出すから。あ、あと一日目の最後の人は必ず二日目の最初の人に金庫渡してから帰ってね」
「了解」
一日目最後担当の伊狩さんと板橋さん、二日目最初担当の牧村くんと園部くんが返事をする。
金庫は前日までに山内先生が買ってきてくれることになってる。
小さくて持ち運びが簡単なやつがあるんだって。


 「よかったじゃん」
「へ?」
展人に言われても、まったく何のことだかわからない。
「二日間とも鈴木と一緒に回るんだろ?」
「ううん、回らないよ」
「えっ!」
あたしの言葉に展人が驚いた声を出す。
鈴木に『一緒に回ろう』と言われたけど、二日間ずっとって意味だったのかな?
あたしは二日間のうち一日は一緒にいる、って意味だと思ったんだけど。
「お前なぁ……彼女だったら学校行事の時は一緒にいるのが当たり前だろうが」
「そ、そうなの?」
だって生まれて初めての彼氏なんだから、わかるわけない。
「そういうもんなの! あぁ、もう鈴木にハッパかけとくか」
展人は頭をかきながら、去っていった。
怒ってるみたいだったけど、いったい何だろう?



 「藤谷、俺に遠慮してる?」
帰りぎわに鈴木があたしに聞いてくる。
あたしは何のことかわからなくて聞き返した。
「何が?」
「文化祭のこと。 俺、『一緒に回ろう』って言ったよな? なのに赤垣に『回らない』って言ったって聞いた」
展人め、余計なことを。
「展人は『二日間一緒なのか』って聞いてきたから、『一緒じゃない』って言ったよ。 でも、それはあたしが一日だけ一緒に回るって思ってたからそう答えたけど」
「そうなのか……」
「二日間とも一緒に回る? それともどっちか一日だけにする?」
「二日目だけでいいよ。 藤谷も河内や葛西と回りたいだろ?」
「本当? 鈴木こそ遠慮してない?」
「ああ」
「なら、いいや。 二日目、楽しみにしてるからね」
あたしは確認するみたいに言った。
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