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● ON YOUR MARK 2  ●

 七月半ばから期末テストが始まる。
音楽・美術・家庭科は実技も紙のテストもほとんど捨てたも同然だ。
体育だけは実技は何とかなりそうだ。
保健体育は他の3教科と同じで、紙のテストについては手のつけようがなかった。


 他のクラスと比べて進度が速い教科は、自習になることが多くなった。
今日は担任の教科である国語が自習になった。
くみちょーが「自習」と言ったとたんに、教室中が一気に騒がしくなる。
「隣のクラスは授業をしているんだから騒がないで!」
周囲の話し声で、先生の声も聞こえないぐらいだ。
後ろのほうでは机を動かす音も聞こえる。
好きな人同士のグループを勝手に組み始める。
あたしの机には世良が来た。
手にはそれぞれ違う教科のプリントやらノートがある。
世良は理科、智穂は英語だ。
何でよりによって別々のもの持ってくるかな。
後ろの智穂の席と向かい合わせになるように、机を動かす。
「智穂、ここ教えて」
世良が智穂に尋ねる。
化学式がいまいちわからないのはあたしも一緒なので、おとなしく聞き入る。
「智穂は理系なんだね」
あたしがそう言うと、智穂はきょとんとした顔でこちらを見た。
「そうなのかな? 自分でもわからないや」
「数学はどうなの?」
「好きでも嫌いでもないかな」
続きやろう、と智穂は机に目を向けた。



 「あたしのばっかりじゃなく、智穂の英語もやろうよ」
世良が言ったので、英語に取りかかることにした。
「現在完了形とか、わけわかんなさすぎだよ」
「あたしも」
「展人に聞こうよ」
あたしは立ち上がった。



 展人は一人、自分の席で洋書らしき本を読んでいた。
誰もそこに近づかない。
周囲にいるグループも彼に声をかけようとはしていなかった。


 思わず、口を押さえてしまう。
「ちょっと……」
世良が智穂をひじでつつく。
智穂が振り返り、驚いた顔をしている。
その光景を見なければよかった、そう思った。



 二人が転入してきてひと月あまり。
もしかしたら、展人に友だちがいないかもしれないなんて考えたことなかった。
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